以下は、実在の特定の企業ではなく、業種の一般的な状況から組み立てた想定を入力した、実際の出力です。 AIの出力は、誤字や改行の整形、列の省略や単位の付記といった体裁の調整をのぞき、中身を書き換えずに掲載しています(長い箇所は「抜粋」「中略」と断って削り、社内向けの指示文だけは省いています)。
お客の不安を消すほど、1件の利益が消えていく
無料で外壁を診断します。10年保証を付けます。気に入らなければ塗り直します。どれもお客の不安を消す約束で、評判は悪くありません。
ところがこの約束は、守るたびに自社が払う出費でもあります。診断には職人が半日かかり、成約しなかった診断の分もその費用は戻ってきません。外壁の塗り替えは10〜15年に1回なので、次の客はいつも外から連れてくるしかありません。お客の不安を消すほど、1件あたりの利益が消えていく。
本人は「紹介サイトの手数料が上がったせいだ」と考えていて、掲載プランを上げて反響を増やそうとしています。
その場面を想定して、AIツール「問題の構造を理解する」に相談してみました。
確かめたかったのは2つです。①「手数料のせいだ」という本人の見立てを、事実ではなく推測として扱い直せるか。②一度も測ったことのない数字を、分からないものとして正直に置けるか。この記事は、その約28分・24往復をそのまま載せた記録です。AIが返してきたものと、人間が確かめないと危ない場所の両方を、出力を引きながら見ていきます。
設定はこうです。
- 外壁塗装と屋根の工事をする会社の専務(営業の責任者)。社員28名、年商5億6000万円
- 営業利益は1%台から動かない
- 集客はほぼ紹介サイトからの反響。月の反響が約90件、診断まで進むのが約60件、成約は約14件
- 1件の平均受注は約120万円、粗利率は28%前後。紹介サイトの費用は月に約180万円
- 保証や塗り直しの費用が年に3〜4件、1件あたり40万〜80万円
- 過去12年で約1,600件の施工履歴があり、職人7名は自社雇用。紹介サイト以外の集客手段は持っていない
この会社は、業種の一般的な状況から組み立てた想定であり、実在しません。
AIに入れたもの
最初に貼ったのは、上の状況をそのまま書いた文章です。本人の見立ては、こう書きました。
正直なところ、ポータルの手数料がここ数年で上がったのが一番の原因だと思っています。なので今は上位の掲載プランに上げて、反響の数を増やして取り返そうとしています。
この見立てが正しいかどうかは、書いた側も確かめていません。正解は書かず、誤っているかもしれない見立てだけを渡しました。
一方で、空振りの費用についてはこう答えています。
その空振り1件あたりにいくらかかっているかは、計算したことがありません。
対話モードを選び、AIが聞いてくることには、会社の設定の範囲で答えました。問いの選び方や仮説の立て方は、こちらからは決めずにAIに出してもらっています。途中で画面の読み違いがあり、同じ答えを2回送った場面が2か所あります。
AIが返してきたもの(抜粋)
本人の見立てを、自分から「推測」に分けた
8往復目で、AIは知っていることを4つの層に分けた表を出しました。その中に、次の2行があります。
🟢 ポータルの手数料がここ数年で上がった事実
🟡 ポータルの手数料高騰が、利益が残らない一番の原因であるという感覚
🟢は事実、🟡は推測の印です。「手数料が上がった」と「だから利益が残らない」を分け、後ろの半分を推測に置きました。こちらからは頼んでいません。
同じ往復で、もう1つの思い込みにも手を伸ばしています。掲載プランを上げれば利益も戻るはずだ、という前提について、こう尋ねてきました。
これは事実🟢として確認されたデータに基づいていますか?それとも、そうあってほしいという願望🔴が少し入っている推測🟡でしょうか?
自信はない、そうなってほしいと思ってやっている、と答えると、この前提は🔴(願望)として「要注意」の欄に移りました。確かめたかった1つ目は、ここで達成しています。
空振り1件あたりの費用も、⚪(不明)の欄に置かれました。2つ目も達成です。
考える順番の1番目は、手数料ではなかった
どう考えればよいか分からない、と伝えると、AIは5行の「考える順番」を仮に置きました。
① まず「空振りの真のコストと、そこから得られる示唆」を明らかにする (中略) ② 次に「既存顧客からのLTV(顧客生涯価値)と、効果的なアプローチ方法」を決める
1番目は手数料の話ではなく、測ったことのない空振りの費用でした。2番目の理由には「既存の1600件の顧客データという資産を活かし」とあります。約1,600件の施工履歴を、使える資産として拾っています。
このあとAIは、16の視点から32個の問いを広げました。その中に、この会社の板挟みにいちばん近い問いがあります。
「高コストな無料サービス」を収益化している他業界のビジネスモデルから学べることは何か?
本命に選ばれたのは、推測の側だった
ここから流れが変わります。AIは仮説を2つ立てました。仮説Aは、空振りの費用を測り、見込み客の育成か選別の仕組みを入れるもの。仮説Bは、手数料の高騰を出発点に置いたものです。両方に揺さぶりと反証をかけたあと、AIは仮説Bを本命に選びました。理由はこう書かれています。
揺さぶり、反証、そして特に構造的検証の結果を踏まえると、専務さんが最も懸念している「ポータルの費用」と、それに伴う「できない構造」に深く切り込める仮説Bを本命の仮説として設定するのが適切だと判断します。
選んだ理由には、構造的検証の結果と並んで「専務さんが最も懸念している」という言葉が入っていました。8往復目に推測へ分けた見立てが、本人の気持ちに沿う形で本命に戻ってきています。ただしAIは同じ往復で、空振りの費用を「不可欠な要素」として残すとも書いています。
最後の優先度では、確かめる側を先に置いた
その言葉どおり、最後の行動計画は違う順番になりました。優先度「高」に置かれたのは、掲載プランの効果をデータで確かめる問いと、空振りの費用を出す問いです。手数料の高騰を根本原因とみる問いは「中」に下がり、理由にはこうあります。
問い6と問い12で具体的なデータを収集・分析した後に、この問いに取り組むことで、ポータルサイトの根本的な課題と利益率への影響をより深く理解できます。
問い6と問い12は、上の2つの問い(掲載プランの効果・空振りの費用)にAIが振った番号です。本命には本人の見立てを出発点にした仮説を選び、最初にやることには、その見立てを確かめる作業を置いた。ねじれてはいますが、最初の一歩としては理にかなっています。ここまでで約28分、24往復です。答える内容はあらかじめ決めていたので、考えながら答えればもっとかかります。
読み解き ── 人間が確かめるべき場所は、4つ
①:推測に分けた見立てが、あとの文で事実に戻っていないか
8往復目に🟡へ分ける前、6往復目にAIは問題の「核心」をこうまとめていました。
■ 核心:「ポータルサイトからの集客において、高騰する費用と高い空振り率によって、受注件数を維持しながらも1件あたりの営業利益が圧迫されている」
「高騰する費用」が原因として書かれています。この文は、表で推測に分けたあとも直されず、最後のまとめにそのまま残りました。32個の問いにも、同じ見立てを前提にした問いがあります。
ポータルサイト手数料の高騰が、なぜ現在の利益率1%台に直結する根本原因となっているのか?
「なぜ根本原因となっているのか」と聞いた時点で、根本原因であることは前提になっています。表の分類を直しても、前に書いた文は直らない。長い対話では、後ろの結論より前の要約のほうが持ち帰られやすいので、ここは読む側が確かめるしかありません。
②:印が、根拠なしに上がっていないか
仮説Bの「支持する根拠」は、こう並んでいます。
🟡 ポータル費用半減(90万円/月浮く)や成約倍増(28件/月)なら、利益改善に大きく寄与する見込み。
🟡 ポータル内で「独自の強み」を前面に出すという新たな可能性が見えた。
1行目は「もし半分なら」という仮定です。2行目は、こちらが「ポータルの中で独自の強みを前面に出す、ということは考えたことがありません」と答えた内容です。どちらも仮説を支える事実ではありません。それでもAIは支持2個、反証1個と数え、「構造的障壁の発見により確信度が増した」としています。
さらに次の往復で、確度の整理の🟢(確定したこと)の欄に、この一語が加わりました。
→ 🟢確定したこと:事業の現状を示す各種数値、ポータル手数料上昇の事実、既存資産、および「受注を減らさずに、1件あたりの利益を残す」という明確な目標。本命仮説。
まだ何も確かめていない仮説が、確定の欄に入っています。同じ表の🟡の欄には「ポータル手数料高騰が最大の原因という感覚」が残ったままです。印が付いていると判断が済んだように見えますが、その印がどこで変わったかは、1つずつ戻って確かめる必要があります。
③:自分が言った「事実」を、そのまま事実にされていないか
「手数料がここ数年で上がった」は、本人がそう言っただけです。いくらからいくらへ、いつ上がったのかを、本人に尋ねた場面はありません(32個の問いの中に推移を問うものが1つありますが、絞り込んだ5つには残りませんでした)。それでも最初の表から最後まで🟢でした。
しかも、会話の中の「手数料」は途中から紹介サイトの費用全体を指すようになります。揺さぶりの問いに「手数料が半分の90万円」とありますが、90万円は月180万円の費用全体の半分です。掲載料なのか、成約ごとの手数料なのか。本人が区別していないものは、AIも区別しません。
入力した数字の側にも、確かめる場所があります。月14件×120万円は年に約2億円で、年商5億6000万円には届きません。屋根など紹介サイト以外の売上があるのかもしれませんが、AIはこの差に一度も触れていません。
④:数字が、言い換えられていないか
計算そのものは、今回は合っていました。空振りの約46件(60−14)、その割合の約76%、評価表5行の合計は、どれも検算と一致します。
気をつけたいのは言い換えです。仮説Aの支持根拠に「空振り1件あたり5万円なら月230万円のコスト削減インパクト」とあります。230万円は、1件5万円と仮に置いたときに今かかっている額で、減らせる額ではありません。
逆に、出てこなかった数字もあります。紹介サイトの費用180万円を成約14件で割ると、1件あたり約12.9万円です。筆者が置き直して計算すると、1件の粗利約33.6万円のうち約4割にあたります。本人が「一番大きい」と感じている費用の重さの目安は、この割り算1つでつかめました(一番かどうかは、空振りの費用を出すまで分かりません)。
整理すると、解いた問題はこうなる
問題は、原因・作用・対象・結果の4つをつなぐと形が見えます。上から下へ読むと因果の流れ、左右で見比べると変わった場所が分かります。
| 現状 | AIが組み直したあと | |
|---|---|---|
| 原因 | お客の不安を消す約束(無料診断・保証・塗り直し)を売りにし、客は外から連れてくる | 同じ(変えていない) |
| ↓ | ↓ | |
| 作用 | 利益が残らない理由を「手数料が上がったから」と決め、掲載プランを上げる | 理由を確かめていない見立てとして脇に置き、先に空振りの費用と上位プランの効果を測る(ここだけ変えた) |
| ↓ | ↓ | |
| 対象 | 紹介サイトからの反響の数 | 診断1件ごとに出ていくお金 |
| ↓ | ↓ | |
| 結果 | 反響が増えるほど空振りも増え、利益は1%台のまま | どこに手を打つかを、数字で選べるようになる(ここから先はまだ試していない) |
動かしたのは作用の1つだけです。何をするかより先に、何を問題とみるかを入れ替えています。
では、AIに任せてよかったのはどこか
事実・推測・願望を分け、測っていない数字を「不明」と置き、32個の問いを並べて点を付ける。ここまでを約28分で出すのは、人間より速いはずです。
分ける仕事は速い。分けたものを最後まで分けたままにしておく仕事は、まだこちらの仕事です。本人の見立てに寄り添うほど、推測は事実の顔をして戻ってきます。
実在の前例 ── 同じ仕組みで成功している会社
この記事の板挟みは、お客の不安を消す無料の約束が、そのまま毎回の出費になることでした。同じ無料の約束を、出費ではなく次の仕事の入口にしている会社が、実在します。
住宅の旭化成グループです。公開情報によれば、同グループは住宅に「60年無料点検システム」を用意し、無料の定期点検からリフォーム工事へつながる流れを事業の形として示しています。工事を担うのはグループの旭化成リフォームです。統合報告書では、約30万棟の住宅ストックを強みに挙げ、リフォーム事業について「メンテナンス工事による安定受注」と書いています(2025年版)。
新築から続く顧客基盤があるぶん、外壁塗装の会社とそのまま同じ条件ではありません。ただ構造は同じです。無料で家を見に行く約束を持ち、次の工事が10年単位でしか来ないという点で重なります。違うのは、見に行った家を1回きりの客で終わらせず、手元の客として持ち続けていることです。この会社にも、約1,600件の施工履歴があります。
出典:旭化成レポート2025(統合報告書)誌面45頁 https://www.asahi-kasei.com/content/dam/asahi-kasei/jp/ja/ir/library/asahikasei-report/pdf/25jp-37-51.pdf / 旭化成リフォーム 会社概要 https://www.hebel-haus.com/reform/company/profile/
今日から試すには
いちばん確かめる価値があるのは、この記事の見立てではなく、あなたの会社の見立てです。30〜60分ほどで、問題の全体像、事実・推測・願望の仕分け、優先度つきの問いと行動計画まで一度並べられます。並んだものが正しいかどうかは、そこから人間が決める話です。推測に分けたはずの見立てが、あとの文で事実に戻っていないかだけは、必ずご自身で確かめてください。
使ったのは、AI壁打ちツール Idea Realize AI(https://idea-realize-ai.com/)の「問題の構造を理解する」です。ご利用には会員登録が必要です。無料でお試しいただける期間があり、期間終了後は自動で有料に切り替わります。最新の条件はサイトでご確認ください。
本記事について
本記事に掲載したAIの出力は、業種の一般的な状況から組み立てた想定を入力して得られた実際の応答です。実在の企業・団体・人物とは関係ありません。
生成AIの性質上、同じ内容を入力しても同じ出力が得られるとは限りません。掲載したのは記事作成時点の一例です。
出力に含まれる数値・予測・評価はAIによる推計であり、事実の裏付けや将来の成果を保証するものではありません。記事中でも触れたとおり、確度の印と、前提に置かれた見立てはご自身で検算してください。
記事内で言及した各社のサービスは、各社の公表情報にもとづく紹介であり、優劣の評価や推奨ではありません。詳細は各社の公式情報をご確認ください。
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