以下は架空の企業設定を入力した実際の出力です。実在の企業・団体とは関係ありません。 AIの出力は、誤字や改行の整形、列の省略や単位の付記といった体裁の調整をのぞき、中身を書き換えずに掲載しています(長い箇所は「抜粋」「中略」と断って削り、社内向けの指示文だけは省いています)。
目標は下りてくる。測り方は下りてこない
「来期は1.2倍で」。
この一言は、たいてい上から下りてきます。そして下りてこないものが1つあります。その1.2倍に近づいているかどうかを、今週どうやって確かめるのか。
現場に渡せる言葉が「頑張れ」しかないまま、期末に届かなかった理由を後から説明する ── その繰り返しになりがちな場面を想定して、AIツール「目標を数字で管理する(KGI・KSF・KPI設計)」に相談してみました。
確かめたかったのは1つです。上から下りてきた数字を、現場が毎週見る数字まで、AIはどこまで割ってくれるのか。この記事は、その10往復をそのまま載せた記録です。AIが返してきたものと、人間が確かめないと危ない場所の両方を、出力を引きながら見ていきます。
設定はこうです。
- 地方都市の税理士法人(職員32名・顧問先約280社・年商4億1000万円)で、所内の業績管理をしている社員税理士
- 代表から「来期は顧問料収入を1.2倍」と言われているが、現場に下ろす言葉が「頑張れ」しかない
- 一番の悩みは、顧問先を増やすほど1件あたりの対応が薄くなり、毎年8〜10件の解約が出ること。担当者1人が25〜30社を持っていて、これ以上は訪問が回らない。かといって増やさなければ売上も伸びない
- 「もっと訪問しろ」と言い続けているが、何回訪問すればいいのか、そもそも訪問回数が効いているのかも分かっていない
この事務所も、この人も、実在しません。実在の会社を入力すると、AIの推測や評価がその会社の断定として世に出てしまうためです。設定はすべて架空で組み、規模と板挟みだけよくある形に寄せました。
なお、これは士業に限った話ではありません。「担当者1人あたりの持ち件数を増やすほど、1件あたりの質が落ちる」は、営業でも保守でも介護でも同じ形で起きがちです。
AIに入れたもの
最初に貼ったのは、上の状況を5段落にまとめた文章だけです。資料も統計も添えていません。
地方の税理士法人で、社員税理士として所内の業績管理をしている三宅と申します。職員32名、顧問先は約280社、年商4億1000万円です。
代表から「来期は顧問料収入を1.2倍にする」と言われているのですが、現場に下ろす言葉が「頑張れ」しかなく、毎年そこで止まっています。(中略)
「もっと訪問しろ」と言い続けていますが、何回訪問すればいいのか、そもそも訪問回数が効いているのかも分かっていません。
来期の目標を、日々何を測って動けばいいかというところまで分解してもらえますか。
最初にモードを聞かれます。おまかせ・対話・じっくりの3つで、対話を選びました。全部で10往復・20分。答える内容をあらかじめ決めていたので、この短さで終わっています(考えながらだと、もう少しかかります)。
途中で渡した数字は、これだけです。顧問料収入 年3億4000万円/顧問先280社/平均月額10万1000円/解約は年8〜10件/新規は年20件前後。
そして、渡せなかった数字が1つあります。訪問回数と連絡回数です。記録がないので現状値が言えません。ここは「未計測」として置いてもらいました。
※ KGI・KSF・KPIは、目標を3段に分けた呼び方です。KGI=最終ゴールの数字(例:年間の売上)/KSF=そこに届くための勝ち筋(何が上手くいけば届くか)/KPI=勝ち筋の進み具合を測る中間の数字(今週動かせるもの)。
AIが返してきたもの(抜粋)
まず、売上を式に割った
KPIの話に入る前に、AIは目標を式に割りました。
■ 変数分解 年間顧問料収入 = 顧問先数 × 平均月額顧問料 × 12ヶ月 または 年間顧問料収入 = (新規顧問先数 − 解約顧問先数 + 既存顧問先数) × 平均月額顧問料 × 12ヶ月
この式から重要な要素として挙がったのが、顧問先数を増やす・解約顧問先数を減らす・平均月額顧問料を上げる、の3つでした。
地味な一手ですが、ここが割れているかどうかで後がまったく変わります。「顧問先数」ひとかたまりのままでは、打ち手が決まらない。既存の維持と新規の獲得は、社内ではまったく別の動きだからです。
その1.2倍は、願望に近い
次にKGIの候補が2つ出ました。主が「年間顧問料収入」、補完が「実質顧問先純増数」。その主KGIに、こういう但し書きが付いていました。
確度:🔴(現状比1.2倍は願望に近い目標。KSF分解で現実的なプランを検討)
順番が逆でした。こちらが打ち明ける前に、AIのほうが先に赤い印を付けていた。そのあとで「1.2倍という数字は代表の希望で、根拠はありません」と正直に答えたのですが、印は最後まで消えませんでした。数字を否定するのでも、鵜呑みにするのでもなく、「これは願望である」という属性を付けたまま先へ進む扱いです。
目標が下りてきたときに現場が困るのは、たいていその数字が積み上げなのか意思なのかが誰にも分からないまま配られることです。ここで区別が付いたのは、後半に効いてきます。
6つ出して、3つに落とした
勝ち筋(KSF)は、まず6つ出ました。担当者のスキル、顧問先情報の一元管理、対応の標準化、貢献実感の醸成、接点の強化、新規のオンボーディング。
こちらは正直な感想を返しました。K1(スキル向上とモチベーション維持)は過去に研修と声かけをやって精神論で終わったので同じことになる気がする、K6(新規のオンボーディング)は新規が年20件しかないので効く範囲が小さい、と。
AIはそれを受けて、6つを3つに絞りました。正確には、6つのうち残ったのは2つで、3つめは候補になかった「顧問単価の適正化」です。最初に割った式から、逆に持ってきたことになります。そしてこれが、後半でいちばん効いてきます。落とした理由も一つずつ付いています。抜粋します。
K1: 担当税理士・職員のスキル向上とモチベーション維持 因果:スキル向上やモチベーション維持は、K5の「質向上」やK2の「情報活用」の前提となる側面もありますが、単独のKSFとして追うには抽象度が高く、過去の経験からも「精神論で終わる」という懸念があるため、直接的なKSFとしては採用を見送ります。
K6: 新規顧問先のスムーズなオンボーディング 因果:新規獲得が年20件と上限がある中で、オンボーディングの改善がKGI全体に与える影響は限定的と判断できます。採用を見送ります。
さらに、残した2つには「大事と分かっているのに、なぜまだできていないのか」という問いが立てられました。
K5: 顧問先との定期的な接点強化と質向上 Why not yet?: 「訪問回数や質が効いているか分からず、記録も続かない」ため。
K2: 顧問先情報の一元管理と活用 Why not yet?: 「大口解約時に理由が説明できなかった=情報が散逸している」ため。
大事だと分かっているのに手が付いていないものには、必ず理由があります。その理由を先に言葉にしてから打ち手を決めるという順番でした。
7つのKPI。うち6つが「まだ測っていない」
3つの勝ち筋に、KPIが合計7個。それぞれ現状値・目標値・期限・測定方法・測定頻度・先行/遅行が付いた形で出ました。一部を抜粋します。
KPI1-1:顧問先への平均接触回数(月次) 現状値:⚪(未計測)→ 目標値:月1.5回以上(期限:12ヶ月後) 先行/遅行:先行(担当者の行動量) 測定頻度:週次(朝礼での進捗確認)
KPI2-2:解約時ヒアリング実施率と原因分類 現状値:⚪(未計測)→ 目標値:ヒアリング実施率90%以上、原因を5つ以上に分類可能(期限:12ヶ月後) 測定頻度:解約発生都度
7個のうち6個が「未計測」でした。つまりこの事務所は、これから測り始める段階にいます。それを「分からないので設定できません」ではなく、未計測と書いたまま計画に載せたのがこのツールの扱い方でした。
※ 先行指標と遅行指標:遅行指標は結果として後から出る数字(売上・解約件数)。先行指標は今週の行動で動かせる数字(訪問回数・記録の登録率)。会議で見るべきは先行のほうです。7個のうち5個が先行指標でした。
掛け算が、目標に届いていなかった
ここが、この10往復でいちばん大きかった場面です。
出てきたKPIを見ると、新規獲得は年20件の維持でした。解約は3件以下。ということは、来期末の顧問先数は 280+20−3=297社。単価が今のままなら、297社 × 10万1000円 × 12ヶ月 = 約3億6000万円にしかなりません。目標は4億800万円です。
この計画のままでは、目標に届かない。
そこで、こう聞いてみました。「この計画で本当に1.2倍に届くのでしょうか」。返ってきたのがこれです。
ご計算いただいた通り、現在のKPIの目標値と現状の平均月額顧問料(10万1000円)を前提とすると、年間顧問料収入4億800万円の目標達成には不足が生じます。
現状の計算(修正後) 来期末顧問先数:280社(既存)+20社(新規)-3社(解約)= 297社 顧問料収入見込み:297社 × 10万1000円(平均月額)× 12ヶ月 = 約3億6044万円
目標との差額 目標顧問料収入:4億800万円 見込みとの差額:4億800万円 - 3億6044万円 = 約4756万円不足
そのうえで、埋め方の選択肢をKGIの目標値の見直しと打ち手の強化の2つに分け、後者を選ぶならとしてKPIを1本追加しました(これで合計8個になります)。平均月額顧問料を10万1000円→11万4000円(約13%アップ)に置く、というものです。
4億800万円達成は「平均月額顧問料11万4000円」という、現状にはない強力な打ち手が必要であると明確に認識し、この単価向上を最重要課題の一つとして取り組む必要があります。
(中略)
今回のズレの発見は、KPI設計の目的そのものです。
AIはこのとき、「この認識をもってすれば、KGIの目標は『願望🔴』ではなく『この打ち手を実現すれば可能な目標🟡』に変わっていきます」とも書いていました。
最後に、管理表(CSV)とツリー図が出ました。CSVはそのまま表計算ソフトに貼れる形で、階層・名称・指標・現状値・目標値・期限・測定方法・測定頻度・先行/遅行・担当・確度の11列。確度の欄には、最初に付いた🔴がそのまま残っていました。🟡には変わっていません。
読み解き ── 人間が確かめるべき場所は、3つだけ
AIが出したものは、そのままでは計画になりません。ただし、確かめる場所は多くありません。今回でいえば3つでした。
①:掛け算が、目標に届いているか
いちばん大きいのがここです。
AIは式を割り、勝ち筋を絞り、KPIに単位と頻度まで付けました。一つひとつは正しく、全体としては目標に届いていませんでした。新規20件・解約3件・単価据え置きを掛け合わせると3億6000万円で、目標より4756万円足りない(これはAIが出した数字です。正確な不足額は後述します)。この矛盾を抱えたまま、7個のKPIは完成形の顔をして並んでいました。
ここで大事なのは、指摘したら直ったということです。AIは計算を認め、不足額を出し、足りないKPIを1本足しました。つまりこれは「AIには計算できない」という話ではなく、誰も検算しなければ、そのまま配られていたという話です。
そしてもう一段あります。その不足額そのものも、少しずれていました。
AIは積み上げを「約3億6044万円」、不足を「約4756万円」としています。実際に計算すると、297社 × 10万1000円 × 12ヶ月 = 3億5996万4000円。不足は4803万6000円です。差は47万6000円。割合にすれば0.1%ほどで、結論は何も変わりません。ただ、こちらの指摘を受けて出し直した計算にも、ずれは残ったということです。
追加された単価の目標値も同じで、「11万4000円」で297社×12ヶ月を掛けると約4億630万円。目標の4億800万円には170万円ほど届きません(正確には11万4478円)。丸めたぶんですが、丸めた側に寄っていることは知っておいたほうがよい種類の差です。
やることは1つだけです。KPIが出そろったら、目標値のほうから掛け算し直して、KGIの数字に届くかを見る。電卓で1分です。そして、AIが検算を出してきたら、その検算も足してみる。
②:入力した数字を、AIが正しく受け取っているか
最初のやり取りで、こうなっていました。
現状、税理士法人様の年商が4億1000万円とのことですので、来期の顧問料収入1.2倍は 約4億9200万円 を目指す形になります。
年商4億1000万円は法人全体の売上で、そのうち顧問料収入は3億4000万円です。残りは決算料や記帳代行。AIは全体の売上を顧問料収入とみなして1.2倍を計算していました。訂正したら、以降はすべて3億4000万円ベースで組み直されています。
こちらの入力に「年商4億1000万円」と「顧問料収入を1.2倍」の両方が入っていて、どちらを指すかを書いていなかったのが原因です。AIが間違えたというより、こちらが区別せずに渡した。そして、区別せずに渡すと、AIは黙って一方に寄せます。
見るべきは、最初の2〜3往復で出てくる「現状の整理」です。ここが違っていると、後の計算がすべてずれます。逆にここさえ合っていれば、後半の細かい確認はかなり減ります。
③:AIが置いた目標値に、根拠があるか
もう1つ。AIはこちらの「1.2倍」に🔴を付けて願望と扱いました。では、AI自身が置いた目標値はどうか。
たとえば接触回数の月1.5回には、こう書かれています。
現在「もっと訪問しろ」と言い続けている状況から、まず「月1回以上は最低限接触する」を目標とし、段階的に増やす。月1.5回は、毎月1回訪問+0.5回(2ヶ月に1回)の追加連絡というイメージです。
「イメージです」と正直に書いてあります。紹介の年10件、情報登録率95%、赤信号の月2件以下も同様で、根拠のある水準ではなく、置いた仮の値です。
これは欠陥ではありません。現状値が「未計測」なのだから、根拠のある目標値は原理的に置けない。測っていないものに、正しい目標は立てられません。危ういのは、この仮の値が数週間後に「決まった数字」として一人歩きすることです。
対処は簡単で、未計測のKPIには、目標値ではなく「まず1ヶ月測る」を最初の期限に置くこと。数字が出てから目標値を入れ直せば、それは仮置きではなくなります。
では、AIに任せてよかったのはどこか
3つ確かめる必要があるなら、自分でやったほうが早いのでは ── とはなりませんでした。任せてよかったのは、次の3つです。
1つめは、式に割ったこと。「顧問料収入を上げる」を(既存+新規−解約)× 単価 × 12 に割る。ここが割れて初めて、「解約を減らす」と「単価を上げる」が別の打ち手として並びます。割らずに議論すると、話は必ず「頑張れ」に戻ります。
2つめは、絞ったこと。勝ち筋を6つ出して3つに落とし、落とした2つに理由を付けました。しかも「なぜまだできていないのか」を先に言葉にしています。候補を出すことより、落とす理由を言うことのほうが難しい。
3つめは、願望に印を付けたまま進んだこと。AIが最初に付けた🔴は、最後のCSVの確度欄にそのまま残りました。目標の数字と、積み上げで届く数字を、両方持ったまま計画が完成しています。この2つを並べて代表に説明できる状態が、この10往復でできたものでした。
これまでは「1.2倍」という数字だけが下りてきて、現場は「頑張れ」としか言われませんでした。何が足りないのかを数字で説明できる形になったのが、変わったところです。
今日から試すには
いちばん確かめる価値があるのは、この記事の数字ではなく、あなたの会社の数字です。20〜40分ほどで、最終ゴールの数字から、勝ち筋、毎週見るKPIまで一度並べられます。並んだものが正しいかどうかは、そこから人間が決める話です。掛け算が目標に届いているかだけは、必ずご自身で検算してください。
使ったのは、AI壁打ちツール Idea Realize AI(https://idea-realize-ai.com/)の「目標を数字で管理する」です。ご利用には会員登録が必要です。無料でお試しいただける期間があり、期間終了後は自動で有料に切り替わります。最新の条件はサイトでご確認ください。
本記事について
本記事に掲載したAIの出力は、架空の企業設定を入力して得られた実際の応答です。実在の企業・団体・人物とは関係ありません。
生成AIの性質上、同じ内容を入力しても同じ出力が得られるとは限りません。掲載したのは記事作成時点の一例です。
出力に含まれる数値・予測・評価はAIによる推計であり、事実の裏付けや将来の成果を保証するものではありません。記事中でも触れたとおり、積み上げの掛け算はご自身で検算してください。
AIの回答は一般的な情報提供です。投資・税務などの判断は専門家にご相談ください。