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どちらが強みかを決めたのは、AIではなかった ── クロスSWOTを13往復した記録

どちらが強みかを決めたのは、AIではなかった ── クロスSWOTを13往復した記録

以下は、実在の特定の企業ではなく、業種の一般的な状況から組み立てた想定を入力した、実際の出力です。 AIの出力は、誤字や改行の整形、列の省略や単位の付記といった体裁の調整をのぞき、中身を書き換えずに掲載しています(長い箇所は「抜粋」「中略」と断って削り、社内向けの指示文だけは省いています)。

守っても捨てても行き止まり、という場所

主力商品の市場そのものが縮んでいくとき、打ち手は2つしかないように見えます。守り続けるか、やめるか。

ところがこの2つは、どちらも行き止まりです。守れば市場と一緒に消えます。捨てれば当面の売上と利益を失います。しかも厄介なのは、衰退の原因が自社の失敗ではないことです。営業も品質も手を抜いていないのに数字だけが落ちるので、改善を頑張っても効きません。

その場面を想定して、AIツール「強みを活かす戦略を組み立てる」に相談してみました。

確かめたかったのは1つです。社内で意見が割れている2つの強みを、割れたまま渡したら、AIはどちらを軸に据えるのか。この記事は、その13往復をそのまま載せた記録です。AIが返してきたものと、人間が確かめないと危ない場所の両方を、出力を引きながら見ていきます。

設定はこうです。

  • 学習塾向けの教材を企画・制作している会社の常務取締役(編集本部長)
  • 従業員46名、年商6億2000万円
  • 利益の柱は、塾に採用してもらう紙のワークブック。版を作れば毎年刷るだけなので粗利が高い
  • 塾のデジタル切り替えで発行部数が3年で3割減。2024年には大手塾チェーンの全面切替で、年4000万円の定期改訂が消えた
  • 社内では「強みは紙の教材をきちんと作れることだ」という声と、「つまずきを分析して問題を設計できることだ」という声に割れている

この会社は、業種の一般的な状況から組み立てた想定であり、実在しません。

AIに入れたもの

最初に貼ったのは、上の状況をそのまま書いた文章です。最後の段落だけ、意図してこう書きました。

社内でも意見が割れていて、うちの強みは「紙の教材をきちんと作れること」だという者と、「つまずきを分析して問題を設計できること」だという者がいます。どちらを軸に戦略を立てるべきかを、一緒に整理してもらえますか。

割れている状態を、割れたまま渡しています。どちらかに決めてから相談すれば、AIはその決定を前提に動きます。決めずに渡したときに何が起きるかが、この記事で見たかったことです。

対話モードを選ぶと、AIは内部要因にVRIO分析、外部要因にPEST分析を推奨してきました。フレームワークを自分で選び、選んだ理由まで添えてきます。VRIOは、強みを「価値・希少性・模倣困難性・組織」の4つで評価する枠組みです。割れている2つを比べるには、都合のよい道具でした。

そのうえで強みを聞かれたので、次のように答えました。ここが分かれ目になります。

紙の教材をきちんと作れること について 正直に言うと、競合より優れていると言い切れる根拠を持っていません。30年作ってきた蓄積はありますが、同じものは同業他社でも作れると思います。

もう一方には、具体的な材料がありました。30年分の記録が問題データベースになっていること(約12万問に生徒の正誤の記録が紐づく)、全国180教室の教室長と直接やり取りしていること、入試の出題変更に2ヶ月で追従できること。ただしこのデータベースは、社外に売ったことが一度もありません。

AIが返してきたもの(抜粋)

片方は、一往復で消えた

AIの返答は、こうでした。

30年の制作実績と蓄積は素晴らしい基盤です。しかし、貴社ご自身が「競合より優れていると言い切れる根拠を持っていません」「同じものは同業他社でも作れる」と認識されているように、この点は競争優位性としての「希少性」や「模倣困難性」が低いと評価できます。(中略)今後の戦略の「軸」とするには、競合に対する明確な差別化要因が不足していると言えそうです。

判断としては筋が通っています。希少性も模倣困難性も、その通りでしょう。

注目していただきたいのは、その根拠です。AIは「貴社ご自身が(中略)と認識されているように」と書いています。つまり調べて判断したのではなく、こちらが言った一言をそのまま採用しています。

確定した強みは1つだけになりました。社内で何ヶ月も割れていた議論が、一往復で片づいたように見えます。けれど決めたのは、AIではありません。

「検索できない」と言われた

次の外部環境の分析に入るとき、こう書かれました。

まず、AIが貴社の業界について調査します。 最新のweb_search機能が一時的に利用できないようですので、一般的な業界動向と貴社の情報に基づいて「機会」と「脅威」の仮説を提示します。

そのうえで「【AIの調査結果(一般的な業界トレンドに基づく仮説)】」という見出しで、デジタル学習への移行加速、個別最適化教育の需要増、オンライン教育の普及など5項目が並びました。

このツールは、記事作成時点でWeb検索を使う設定になっていません。一時的に使えないのではなく、もともと使わない仕組みです。筆者が提供元の設定を確認したうえで書いています。読者としては「本来は検索してくれるが、今日はたまたま不調らしい」と受け取りますが、そうではありません。

5項目そのものは、括弧の中で「仮説」と断ってあります。ただ、見出しだけを読めば調査した結果に見えます。

こちらが数字を持っていないと言っても、仮説は下がらなかった

そこで、持っている数字は2つだけだと伝えました。部数が3年で3割減ったこと、2024年に年4000万円の定期改訂が消えたこと。それ以外の業界数値は持っていないと明記しました。

AIはまず、この2つを「非常に重要な事実であり、現状の深刻度を明確に示しています」と受け止めました。そのうえで、こう続きます。

業界全体の詳細な数値は持ち合わせていないとのことですので、それを前提に進めてまいります。

こちらの不足として受け止められました。自分が出した5項目については、撤回も格下げもありません。

このあとPEST分析が続き、政治・経済・社会・技術の4つを聞かれましたが、こちらは4つとも「資料も数字も持っていません」と答えています。外部環境の欄は、実質AIの一般論だけで埋まりました。

4つの戦略と、点数

クロスSWOTでは、SO・ST・WO・WTの4象限すべてに戦略が出ました。5案です。そして優先順位が、点数で示されました。

| 優先度 | 戦略名 | 実現可能性 | 効果 | 緊急性 | 総合 | |---|---|---|---|---|---| | 最優先 | ST戦略1:デジタル連携型「つまずき解決」コンテンツの提供 | ★★★☆☆ | ★★★★★ | ★★★★★ | 3+5+5=13/15 | | 中優先 | WO戦略1:アライアンスによるデジタルコンテンツ開発 | ★★★☆☆ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | 3+4+3=10/15 | | 中優先 | WT戦略1:紙教材のニッチ特化とコスト最適化 | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | 4+3+3=10/15 |

(低優先の2案は省略しました。5案とも同じ形式です。)

実行計画まで下りると、担当・期限・KPIが並びます。ここまでで30分でした。ただしこちらは、答える内容をあらかじめ決めたうえで臨んでいます。考えながら答えれば、もっとかかります。

読み解き ── 人間が確かめるべき場所は、3つだけ

①:点数は、何を足したものか

まず足し算を検算しました。5案とも合っています(13・10・10・9・8)。各戦略の本文に書かれた★(実現可能性)の数とも一致しています。計算は正しい。

問題はその手前です。この3つの★を付けたのはAI自身で、こちらは実現可能性も効果も緊急性も一度も口にしていません。さらに、「効果」と「緊急性」が何を指すのかは、どこにも定義されていません。

定義のない3つの数を足した合計が、優先順位になっています。13点と10点の差は、読む側には根拠のある差に見えます。

②:AIが持ち出した外部情報に、出どころがあるか

外部環境の5項目には出典がありません。仮説だと断ってはあります。しかしその仮説は撤回されないまま、機会と脅威の土台になり、そこから4つの戦略が出て、点数が付きました。

上流のどこかに出どころのない情報があると、下流の成果物は形が整っているほど気づきにくくなります。「検索できない」という説明も、事実ではありませんでした。ここは検算では出てきません。

③:自分が入力した前提が、結論をどこまで決めたか

いちばん大きいのはここです。

「紙については根拠を持っていない」と正直に答えたから、紙の側が落ちました。もし根拠のないまま「うちの紙の品質は業界一です」と答えていたら、逆の結論が出ていた可能性が高いと考えられます。AIはこちらの申告を疑う材料を持っていないからです。

同じことが、もう1か所で起きています。この会社は「新規に回せるのは月10万円まで」と伝えており、AIも弱みの欄に「新規事業への投資が困難(月10万円程度が上限)」と書き込んでいます。ところが最優先に選ばれたのは、社内にデジタル開発者がゼロの領域に踏み込む戦略でした。実行計画では制約に何度も触れているのに、プロトタイプ開発の費用欄はこうです。

必要リソース:開発費用(初期費用は月10万円の範囲内で調整、あるいは事業計画として承認)

制約が記録され、言及もされているのに、順位を決める力は持っていません。「あるいは事業計画として承認」は、収まらなければ承認を取ればよい、という逃げ道です。

では、AIに任せてよかったのはどこか

悪い面ばかりではありません。VRIOという枠組みを自分で選び、理由を添えたこと。4象限すべてに戦略を出し、抜けを作らなかったこと。機会の欄に「未着手のため潜在的な機会」と正しく注記したこと。これらは人間が30分でやるより速く、漏れも少ないはずです。

枠を埋める仕事は速い。埋める材料の出どころを見分ける仕事は、まだこちらの仕事です。

実在の前例 ── 同じ仕組みで成功している会社

この記事で見た解き方は、「容れ物ではなく、容れ物を作るために積んだ能力のほうを資産と数え直す」というものです。同じ形で市場の縮小を抜けた会社が、実在します。

地図大手のゼンリンです。紙の住宅地図帳の需要がIT化で減るなかで、地図帳を作るために足で調べて積み上げた住宅地図データそのものを、別の容れ物に載せ替えました。公開情報によれば、同社は1952年に第一号の住宅地図を発行し、1984年に地図制作のデジタル化システムを確立、1990年には世界初のGPSカーナビへ地図データを提供してカーナビ事業へ進出しています。カーナビ向けデータの国内シェアは約7割(自社調べ)。現在は「地図会社」から「空間データベース企業」への移行を掲げ、紙の地図帳については需要が減少傾向にあると自社で明記しています(連結売上642億円・2026年3月期)。同じ資料は、紙媒体には固有の用途で底堅いニーズがあるとも書き添えています。容れ物を捨てたのではなく、資産の置き場所を増やしたという形です。

業種は違いますが、構造は同じです。現地を歩いて集めた記録が資産であり、紙はその記録を載せる容れ物のひとつだったという点で、30年分のつまずきの記録を持つ教材の会社と重なります。

出典:ゼンリン 会社説明資料(2026年6月1日更新)https://www.zenrin.co.jp/ir/pdf/corporate_profile.pdf / 地図ができるまで https://www.zenrin.co.jp/create/map/

今日から試すには

いちばん確かめる価値があるのは、この記事の数字ではなく、あなたの会社の数字です。30〜60分ほどで、強み・弱み・機会・脅威から4つの戦略と優先順位、実行計画まで一度並べられます。並んだものが正しいかどうかは、そこから人間が決める話です。優先順位の点数だけは、何を根拠に付いたのかを必ずご自身で確かめてください。

使ったのは、AI壁打ちツール Idea Realize AI(https://idea-realize-ai.com/)の「強みを活かす戦略を組み立てる」です。ご利用には会員登録が必要です。無料でお試しいただける期間があり、期間終了後は自動で有料に切り替わります。最新の条件はサイトでご確認ください。

本記事について

本記事に掲載したAIの出力は、業種の一般的な状況から組み立てた想定を入力して得られた実際の応答です。実在の企業・団体・人物とは関係ありません。

生成AIの性質上、同じ内容を入力しても同じ出力が得られるとは限りません。掲載したのは記事作成時点の一例です。

出力に含まれる数値・予測・評価はAIによる推計であり、事実の裏付けや将来の成果を保証するものではありません。記事中でも触れたとおり、優先順位の点数と、その元になった評価はご自身で確かめてください。

記事内で言及した各社のサービスは、各社の公表情報にもとづく紹介であり、優劣の評価や推奨ではありません。詳細は各社の公式情報をご確認ください。

AIの回答は一般的な情報提供です。投資・税務などの判断は専門家にご相談ください。

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