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確かめないと買えないものを、どう売るか ── 事例を一段手前に戻して移す手順

確かめないと買えないものを、どう売るか ── 事例を一段手前に戻して移す手順

本記事に出てくるオーダー家具の会社は、業種の一般的な状況から組み立てた想定です。実在の企業・団体とは関係ありません。Bonobosのみ、公開情報にもとづく実名です。

箱をばらした事例と、まだ箱の中にいる会社

確かめないと買えないものを、どうやってネットで売るか。体験の場と、在庫と、接客を一つの箱に入れたまま、この問いの前で止まっている会社は少なくありません。

その問いにBonobosは、店という箱を働きごとにばらし、試着だけを残して答えました。

ただ、ばらし終えた姿だけを読むと、目に入るのは在庫を置かない試着の店と、オンラインの注文です。自社でそこまで運ぶ段取りが浮かばないまま、読んで終わります。

服の試着の話として読むかぎり、ソファを売る会社が持ち帰れるものはありません。借りるべきは答えではなく、答えが出る前にあった形のほうです。

富士フイルムの形を教材の会社に移した回では、何を強みと見るかという「定義」の手前へ戻しました。今回戻したのは、箱をどう分けるかという「設計」の手前です。戻る先は1か所ではありません。

「試着」と「店」を、働きの言葉に直す

試着して合うものを選んでもらうには、店が要る。けれど店を持てば、在庫の負担も、店員に声をかけられる気まずさも、地方に住む人の不利も付いてくる。Bonobosの記事で扱った板挟みは、ひとことで言えばこうです。

業種の言葉は、4回に分けて抜きます。

最初は商品の名前です。ズボンの試着を、買う前の確認と呼び直します。サイズも丈も、この一語に吸い込まれます。

次は店です。店は、確かめる場であり、在庫を置く場であり、人が応対する場でもありました。名前が消えて、働きが3つ並びます。

三回目は困りごとの名前です。在庫の負担も、声をかけられる気まずさも、地方の不利も、確かめる働きと同じ箱に同居していたから生まれました。まとめて「箱の重さ」の一語にします。ここで服の話は消えます。

四回目で、板挟みとして立てます。確かめさせたいなら箱を持つ。身軽に売りたいなら箱を持たない。両方は取れません。確かめる働きと、それを載せる箱が一体になっているからです。

Bonobosの記事から持ち出したのは、この板挟みの形だけです。試着だけの店という答えも、アパレルや採寸データも、店とネットを束ね直す話や売却の顛末も、向こうに置いてきました。

板挟みが載る業種、載らない業種

スポーツ自転車の販売には、この形が合いませんでした。試乗が要るところまでは同じです。けれど自転車では、サイズが外れるという困りごとが話の中心に来ません。体に合わせる調整はありますが、販売に付き添うサービスの一つという扱いです。そのぶん、板挟みの片側が弱くなります。

置き先に要る条件は、ここで2つに絞れます。確かめないと外れる商品であること。確かめる場を持つことが重いこと。1つ目は、自転車で中心に来なかった「外れる」の側です。2つ目は、前の節で「箱の重さ」と呼んだ側です。

眼鏡や補聴器は、試さないと買えない点が試着と同じです。それでも外しました。Bonobosの記事の本文に、眼鏡のネット直販の会社が実名で出てくるからです。置き先に眼鏡を選ぶと、読んだ方にはその記事の後追いに映ります。

選んだのは、オーダー家具の企画・販売です。ソファや椅子の座り心地と寸法は、実物でしか決まりません。だからショールームが要ります。ところが2つの拠点には、家賃と展示在庫と接客の人件費がまとめて毎月乗ってきます。来場者の6割は買わずに帰り、遠くに住む人はそもそも来られません。ネットの比率を上げたら、今度は返品が増えました。2つの条件が、家具の言葉のままそろいます。

ショールームは、まだ分けていない段階のまま置きました。集客から購入までの流れを設計するツールに渡すので、流れが途切れた状態を、そのまま相談の材料にしたかったからです。

捨てた案と、残した設定

3拠点目を出して1年で撤退した、という経緯は、設定に入れるかどうか迷いました。入れれば、拡大に失敗した会社に見えて話が重くなります。けれど、もう店は増やせないという縛りがないと、AIが3店目を出しましょう、で終わるおそれがありました。撤退を済ませた会社にしておけば、店を増やす以外の道を探すしかありません。外せば、流れを14往復で設計した回の主題がなくなります。

アパレルのまま作る案は、同業なので落としました。事例の縮小版にしかなりません。

自社で工房を持つ製造小売にする案も、見送りました。重さが工場のほうへ寄り、Bonobosの持たない身軽さと向きが逆になります。製造は協力工房に任せ、重いのはショールームだけ、という形に絞りました。

Bonobosの話の後半には、手を付けていません。身軽になった代わりに、お客を集める費用が上がり続けた部分です。ここまで借りると記事が2本分になり、冠婚葬祭の会社を置き先にした回(固定費が重りになる話)と同じ型にも見えます。

返品率や成約率を細かく置く案も捨てました。置けば、数字を良くする話に変わります。残したのは、来場者の6割が買わずに帰る、という1点だけです。

この4つと、自転車・眼鏡の2つは、決めるときに迷っていません。

箱の中身を、働きと重さに分ける

ステップ1。あなたのお客が買う前に確かめているものを、名詞で書き出します。家具なら座り心地と寸法でした。確かめずに買われている商品は、この手順の外です。

ステップ2。その確認をしている場所に、一緒に載っているもの(在庫・人・家賃など)を並べます。確かめる働きと、付いてきた重さに分けて印を付けます。

ステップ3。確かめる働きだけを、箱の外のどこに置けるかを1つ考えます。今回の出力には、お客の自宅を会場にする案が出ていました。場所は要るのに、自社で持たずに済む置き方です。

手元のメモで足ります。箱を分けるこの考え方は、TRIZでいう「分離の原理」(一体の要素を分け、要るものだけ残す)と同じ筋です。

来ない人を買うところまでどう運ぶかで止まったら、AI壁打ちツール Idea Realize AI(https://idea-realize-ai.com/ )に「集客から購入までの流れを設計する」があります。この会社の設定では14往復・30分でした。答えを先に決めていた回なので、ご自身なら30〜60分ほどです。いちばん効きそうな案は、35個の施策の最後にありました。並び順より、箱の外へ出せるかで拾うのが今回の読み方です。ご利用には会員登録が必要です。無料でお試しいただける期間があり、期間終了後は自動で有料に切り替わります。最新の条件はサイトでご確認ください。

本記事について

この記事は、bp-d.com の「勝ち方が、なぜ次の足かせになるのか──Bonobosに学ぶ「上位システムを先に設計した者が勝つ」法則」(https://bp-d.com/?p=4033 )と「いちばん効きそうな一手は、35番目に出てきた ── 集客から購入までの流れを14往復で設計した記録」(https://bp-d.com/?p=4294 )の2本を下敷きにしています。本文でふれた分析と相談の中身は、それぞれの記事にあります。

本記事で取り上げた事例は、『DX経営図鑑』(金澤一央/DX Navigator編集部 著、アルク、2021年)を着想元に、公開情報をもとに独自に再構成したものです。書籍本文・図版の転載は行っていません。

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