本記事に出てくる外壁塗装の会社は、業種の一般的な状況から組み立てた想定です。実在の企業・団体とは関係ありません。
儲からない理由を、取り違えたままの会社
お客に喜ばれる約束を重ねているのに、手元に利益が残らない。良いことをしているのに儲からない状態には、構造があります。
今回置いた外壁塗装の会社も、広告や手数料が高いせいだと考えています。けれど本当に起きていることは別です。お客の不安を消すために付けたもの一つひとつが、自社が毎回払い続ける出費に変わっています。
この形を、マットレスのネット直販で一度も黒字にならなかった会社から借りました。ただし置き先は、失敗した地点から一段手前に戻しています。まだ問題を取り違え、掲載の費用を上げれば取り返せると考えている段階です。問題を取り違えたまま努力すると、努力するほど傷が深くなります。その手前で止めて見せるのが、今回の転用です。置き先の会社の設定は、AIツール「問題の構造を理解する」に入れて相談しました。24往復のやりとりは、別の記事に記録してあります。
3つの原因から、マットレスの言葉を抜く
借り元の失敗には、根本の原因が3つありました。100日の無料お試しと返品自由を、差別化の核に置いたこと。買い替えが10年に1回ほどしかない商品だったこと。持たないことを理想とする考えを集客にまで当てはめ、広告に頼ったことです。
この3つを、1つずつ言い直します。言い直すたびに、マットレスの言葉が一枚ずつ落ちていきます。
無料お試しと返品自由は、まず「買う前の不安を消す約束」と言い直せます。会社の側から見直すと、「守るたびに出ていくお金」です。
10年に1回の買い替えは、「同じお客が戻ってこない」になります。その先は、「次のお客を、毎回外から連れてくる」です。
広告任せの集客も、「お客を生む仕組みを自分で持たない」と置き直せます。お金の流れで言えば、「連れてくるたびに、外へ払う」です。
3つとも言い直した時点で、寝具の話は消えています。手元に残るのは一つの板挟みです。お客の不安と手間を消すほど、1件あたりの利益が消える。尽くせば赤字になり、絞れば魅力が消えます。便利さの目玉が、そのままコストの入り口になっている形です。
TRIZの「理想性」という考え方で見ると、この形の芯が分かります。理想性は、得られる便益を、かかるコストや手間で割った値です。借り元は分子を大きくしながら、分母を自社の外の広告に預けていました。
2つの条件で、置き先をふるい分ける
この板挟みが別の業種でも立つには、2つの条件が要ります。無料の約束が、成約しなかったお客の分まで出費になること。買い替えが極端に少なく、新しいお客を取り続けるしかないことです。
不用品回収と生前整理は、運送の会社を置き先にした記事と業種の印象が重なるので、候補から外しました。どちらもトラックが主役になります。形の写り方だけで比べれば、最もよく写るのはこの業種です。無料の出張査定が空振りし、頼まれる回数は少なく、集客は広告頼みです。
ハウスクリーニングとエアコン洗浄は、年に1回ほど同じお客から頼まれます。この一点で、2つ目の言い直し、同じお客が戻ってこない、が崩れます。無料見積りが空振りするところは同じでも、毎回外から連れてくる必要がないので、置き先にはなりませんでした。頼まれる回数がさらに多い弁当の宅配やサブスク型のサービスでは、借り元の中核が反対を向きます。初回無料の形だけなら、こちらにも借りられます。
残ったのが、外壁塗装と屋根の工事です。塗り替えは10〜15年に1回で、リピートはほぼありません。無料診断、10年保証、不満なら塗り直し。無料お試しと返品自由の位置に、この3つの約束が入ります。空振りした診断の費用と紹介サイト(ポータル)の手数料が、1件の利益を食います。
置き先の専務の見立ても、借り元から写しました。借り元は、広告を少し減らそうと、同じ土俵で節約を続けました。専務は、ポータルの手数料が上がったのが問題だと思い込み、掲載プランを上位に上げています。
業種を建設にしたのは、シリーズでまだ使っていない業種だったからです。10年に1回しか買わない高単価の商材という条件も、無理なく満たせます。
結末を写さず、薄い黒字で止めた
失敗事例を借りるとき、どこまで写すか。ここで迷いました。根本の原因3つは、全部写しています。上場して撤退し、買収されたという結末は写していません。結末まで持っていけば、ツールに相談する前に、会社の行き先が決まってしまうからです。
利益の水準にも、迷いがありました。赤字にすれば、もう手遅れの会社の話になり、読む人が自分ごとにしにくくなります。そこで営業利益を1%台に置き、黒字だが薄い状態にしました。借り元は一度も黒字になっていません。そこまで写せば、再現ではなく再演になります。
ツールに入れた文には、利益が残らないという症状と、手数料のせいだという本人の見立てを並べました。見立ては、誤りとして置いたものです。問題をそこで言い切らせるかどうかは、迷った箇所の一つでした。言い切らせると、構造を分析する場面が減ります。広告費が高すぎるので減らしたい、と書く案は捨てています。それでは正解を先に書いてしまいます。相談の記録で読んでほしいのは、思い込んだままの見立てが問い直されるところです。
語り手は代表ではなく、営業を統括する専務にしました。この判断と、候補から外した3つの業種は、迷いは無いまま決めています。
店の固定費が重りになった事例を、市場の大きさを測る入口に変えた記事も、失敗した地点を入口にしていました。今回はそこから一段深く、何が問題かを定義し直す手前まで戻っています。
約束を、毎回の出費として書き出す
約束を一覧にすると、問題の取り違えに気づく手がかりができます。
ステップ1。お客の不安を消すために、あなたの会社が付けている約束を全部書き出します。無料の診断、保証、やり直しのようなものです。
ステップ2。約束の一つずつに、成約しなかったお客にもお金が出ていくかの印を付けます。印の付いた約束が、毎回払い続ける出費です。
ステップ3。社内で言われている「利益が残らない理由」を1行で書きます。その横に、数字で確かめたことか、そう思っているだけかを書き添えます。
ステップ2の印と、ステップ3の理由が別の費用を指していたら、問題を取り違えているかもしれません。次の手を打つ前に、まずそのずれを見てください。
ステップ3の1行を、事実と推測に分けるところから整理したいときは、AI壁打ちツール Idea Realize AI(https://idea-realize-ai.com/ )の「問題の構造を理解する」が使えます。分けた見立てが、後ろの文でいつのまにか事実として扱われていないか。そこを確かめるのは、使う側の仕事として残ります。ご自身の会社なら、30〜60分ほどが目安です。外壁塗装の会社の設定は、答えを用意してから臨んだので、24往復・約28分で終わりました。ご利用には会員登録が必要です。無料でお試しいただける期間があり、期間終了後は自動で有料に切り替わります。最新の条件はサイトでご確認ください。
本記事について
この記事は、bp-d.com の「業界を変えたのに、なぜ黒字になれなかったのか──Casperに学ぶ「便利さの裏で膨らむコスト」の法則」(https://bp-d.com/?p=3866 )と「推測に分けたはずの見立てが、本命の仮説に戻ってきた ── 利益が残らない理由を24往復で整理した記録」(https://bp-d.com/?p=4332 )の2本を下敷きにしています。本文でふれた分析と相談の中身は、それぞれの記事にあります。
本記事で取り上げた事例は、『DX経営図鑑』(金澤一央/DX Navigator編集部 著、アルク、2021年)を着想元に、公開情報をもとに独自に再構成したものです。書籍本文・図版の転載は行っていません。