何かのスキルを得ようとしたとき、また仕事ができるようになりたいとき、そのスキルに関係するテクニックを学ぼうと考える人は多いのではないでしょうか。
そこで、量をこなして早く上達しようと考える人も多いでしょう。
テクニックを習得するために量稽古は大切ですが、単に数をこなせばいいというものではありません。
そこで、必要なことは、「仮説をつくり、試行して、ふりかえり検証し、モデル化する」の学習サイクルを高速回転させることです。
「仮説」をもった上で試すと、そこで気づきが得られる
仮説とは、「こうすれば問題が解決するのではないか?」という判断基準を言語化した「問い」をたてることです。
試行とは、「たてた仮説を検証するために、試しにやってみること(考えるために行動してみること)」です。
検証とは、「ふりかえること」です。試してみたことを言語化する作業です。
モデル化とは、試行しふりかえり検証から得られた学び、特に「実証された仮説」をもとに自分の価値基準をアップデートすることのために行います。
そこで、仮説が「仮」でなくなり、ルールや方針として正式なものとなります。
ただ、そのルールも不変のものではなく、学びによって随時アップデートしなければなりません。
ふりかえり検証の中で考えた「次にどうするか?」のアイデアは、次の「新しい仮説」につながって学習サイクルを回していきます。
なぜ仮説をもつと、気づきが生まれやすくなるのでしょうか?
それは、「理想」と「現実」の「ギャップ」が明確になるからです。
この「ギャップ」を、ふりかえり検証することで、問題に気づき、課題化することで、その課題に対する解決策となりえる「仮説」を導き出します。
ここでもう一つ大切なのは、「理想」と「現実」のどちらかが曖昧だと、「ギャップ」も曖昧になります。
「ギャップ」が曖昧だと、単に量稽古を繰り返しても、気づきの量も少なくなります。
両方の比較対照が明確だから、ギャップも明確になるのです。
よい量稽古と、よくない量稽古の差は、学習サイクルを回しているかどうかです。
「よい試行」は「よい仮説」からしか生まれないのです。
学びとして得られる収穫量は、「ふりかえり検証」を行うか行わないかで決まる
学習サイクル(仮説をたて、試行して、ふりかえり検証し、モデル化する)の中で、ふりかえり検証は大切な作業です。
試行してみた結果を「言語化」する作業です。
言語化がなぜ重要なのか?
というと言語化から得られる効能が3つあり、ふりかえり検証を行うことで、得られる視点の量が増加します。
・頭の整理ができる
・無意識の行動を意識化できる
・他人に伝達できるようになる
この作業を行わなければ、「ただ実行してみた」だけになり、気づきが少ないまま次に進むことになります。
そのため、学びの収穫量はふりかえり検証を行うか、行わないかで全く違ったものになります。
ふりかえり検証の進め方
ふりかえり検証を行う際に使う思考ツールがあります。
YWTM(やったこと、わかったこと、次にやること、次にやることのメリット)というツールです。
やったことは何か?(事実と解釈の確認)
①「仮説にもとづいてやったことは何か?」
また、
「何か別の仮説を立てたか?」
②「何が起こったのか?」
(想定通りのこと、想定以上のこと)
続けて、
「なぜ想定通りになったのか?」
「なぜ想定以上だったのか?」
を確認する。
③「何が起こったのか?」
(想定にとどかなかったこと、逆に悪くなったこと)
続けて、
「なぜ想定通りにならなかったのか?」
「なぜ逆効果になったのか?」
を確認する。
わかったことは何か?(モデル化できることの確認)
①「わかったことは何か?」
②「得られた学びは何か?」
(想定通りのこと、想定以上のこと)
そこから得られた学びは何か?
③「得られた学びは何か?」
(想定にとどかなかったこと、逆に悪くなったこと)
そこから得られた学びは何か?
④新たにわかった問題・リスク・課題は何か?
次にやることは何か?とメリット・デメリット(学んだことの適用)
①「次はどうするか?」
または、
「次にやることは何か?」
②「変えてはいけないことは何か?」
・変えないことでのメリットは何か?
・変えないことでのデメリットやリスクは何か?
③「変えることは何か?」
・変えることでのメリットは何か?
・変えることでのデメリットやリスクは何か?
④新たに分かった問題・リスクを課題化して、それに対する仮説は立てたか?
の順番で行います。
なお、「ふりかえり検証」は、プロジェクトが終わった後など、時間を取ってじっくりやるものと思われがちですが、記憶が鮮明なうちにこまめにふりかえる習慣をつけていくことが大事です。
ふりかえる習慣が身につくと学習サイクルがより加速します。
まとめ
・「仮説」をもった上で試すと、そこで気づきが得られる。
・気づきが得られるのは、仮説を立てることで「理想」と「現実」の「ギャップ」が明確になるため。
・よい量稽古と、よくない量稽古の差は、学習サイクルを回しているかどうか。
・学びとして得られることの収穫量は、「ふりかえり検証」を行うか行わないかで決まる。
・ふりかえり検証の進め方としてYWTMは最適なツール。
・ふりかえる習慣が身につくと学習サイクルがより加速する。