思考ツール

自分の視野が変わると情報の価値も変わる

自分の視野が変わると情報の価値も変わる

仕事をしているときに、自分の仕事を楽にするための工夫や、早く終わるための工夫をされている方も多いと思います。
そのような工夫で、仕事につながる画期的なアイデア(視点A)を見つけたとします。
それを、上司に相談や報告にいったときに、却下された経験が過去にあったりしませんか?
または、同じことを話しているのに、何か話しが通じ合わない不安さを感じたことはないでしょうか?
そのような場合は、話している視点に対して、視野の違いにより、お互いの「価値や意味」が違っている場合が多いです。
視野を広げることには「選択肢を増やす」ほかに、もう一つ重要な意義があります。

視野が広がると、視点(見ている対象)が同じでも、その持つ意味が変わる

1リットルの水が1本あり、それに視点を合わせたとき、値段を見たらその水が1本1万円だとしたら、「高い!」となりますが、視野を広げたときに、広大な砂漠のど真ん中にポツンと存在しているとわかったら、1本1万円でも奪い合いになるかもしれません。
これが、「視野が広がると、視点(見ている対象)が同じでも、その持つ価値や意味が変わる」ということです。

情報の価値や意味を数式で表した場合

「情報の価値や意味」=視点/視野

になります。
この時、視点は「見ている対象」で、視野は「見えている(認識している)ものすべて」です。

分子の「視点」が同じでも、分母の「視野」が変われば、「価値や意味」が変わります。
分子が「1」のときに、分母が「1」なのか「10」なのか「100」なのかで数字の大きさ(価値や意味)は違ってきます。
視野が狭くなると、目の前の物事の意味が大きくなりすぎて、「選択肢の重みづけ」を間違えやすくなります。

ある担当者が、会社の製品に対してアイデアAを思いついたとします。
情報の価値や意味(1)=視点(1)/視野(1)
部長に報告しましたが、部長の視野では他の部署が、すでにそのアイデアを実行している
情報の価値や意味(0.1)=視点(1)/視野(10)
更に社長の視野では、もっとすごいアイデアBが見えている。そうなると、そのアイデアAの価値や意味は薄れていきます。
情報の価値や意味(0.01)=視点(1)/視野(100)

ですが、注意しないといけないのが、視座が高すぎると抽象度が上がるため、具態度が下がります。

一担当社員の視座では「お客さま個々の姿」がハッキリ見えるのに、社長の視座では「お客さまの姿」が、会社の「業界」や「地域性」など抽象化されます。
お客さまに興味がなければ、きれいサッパリ見えなくなるので、お客さま不在のビジネス判断をしてしまうことがあります。

こうして、視点が同じでも、具態度と抽象度が違うと、話しがお互い合いにくくなります。

そのため、視座は高ければよいわけではなく、上げ下げできることが大事になります。

視野が狭くならないようにする

目標をもつことはよいことだと思いますが、明確すぎる目標(視点)が1つだけあるときは、視野は狭くなります。

それはなぜかというと、目標(視点)が明確になるほど、人はその目標をしっかり見ようとするために視座が近づいていき、結果として視野が狭くなるからです。

一つの明確な目標を持って、その目標達成のために突き進むというのは、一般的な成功ノウハウ的な例といえるものですが、そのリスクとして、視野を狭めてしまうという面があることも覚えておいてください。

アクセスするインプット情報の吸収率をあげるには?
3つあります。
・視点を増やすこと
・偏見から解放されること
・視点が固定した状態から抜け出すこと

視点を増やすことは、視座のコントロールと視野を広げることが大切です。

偏見から解放されること

偏見をもっていると思考がコリ固まってしまいます。
その状態では、偏見にとらわれている分、インプット情報が抜け落ちて吸収率が下がってしまいます。

思考がコリ固まった状態とはどんな状態でしょうか?
イメージ的には、
・自分が正しくて、相手が間違っていると思っている
・相手の視点・視座・視野がわからず、わかろうとも思っていない
・状況が変化しても、習慣を変えられない
・過去の成功体験を「普遍の法則」で正解式だと思っている
・「●●しなければならないから」、「●●すべき」という表現をよく使う
・「でも」から話し始める
・「最近の若いやつは・・・」という
・積み上げてきたもの(既得権益)を大切にする
等々

思考がコリ固まった状態にあると、たくさんの情報に接しても、ほとんど吸収しないです。(する気がないともいえます)

どうすれば思考のコリをほぐせるのか?

人はそれぞれ価値観が違うので、誰もがみんな偏っています。
しかも気づかない無意識の偏りもたくさんあるので、偏りを無くすことはできません。

ですが、「偏見を無くすことはできない」ということを自覚することはできます。

その上で、「物事の評価を決めつけずに受け取る素直さ」を身につけることができれば、インプット情報の吸収率が高まります。

「自分はいま偏見にとらわれていないか?」と常に問う姿勢をもつことで、偏見から解放されやすくなります。

その姿勢でいるとき、まわりから受けた指摘が、自分を偏見から解放するトリガーとなることも多いです。

例えですが、思考ツールは使わないと意味がありません。
私も昔は、人が知らない(今はメジャーではない)TOCやTRIZの知識を習い知っていることで偏見をもっていました。
その情報に特別な位置づけを自分の中でして、通常の仕事や業務と切り離して考えていた時がありました。
しかし、その状態では、実際の検証や事例は増えないのです。
そこに気づき、自分の中で、「道端TOC、道端TRIZ」と自分の中で位置づけ、思考ツールを使うようにしたところで、一つの偏見から解放されたのです。

視座を変える

「話しが通じない」、「理解しあえない」ことの多くは、視座の違いが原因でなることが多いです。

視点が一緒でも、視座が違えば価値や意味の解釈が変わってくるからです。

「お客さまの立場(視座)になって考えよう!」といってもうまくいかないということがよく起こります。
それは、「お客さまの視座」ではなく「売り手目線の視座」のまま、お客さまの視点をただ妄想しているだけなのでズレているためです。
特に、「自社の商品を買ったことがない人」だと「お客さまの視座にはなりきれない」場合が経験してないために起きやすいです。

例えですが、SWOT分析という思考ツールがあります。
内部要因である、自社・自分の「強み」や「弱み」と、外部要因である、「機会」や「脅威」を深掘りし、掛け合わせることで自社・自分の戦略を考えるという思考ツールです。

SWOT分析を学習する中で、ロールプレイングをやったりするのですが、その時に社長役をする時があります。
これはSWOT分析のコンサルタントが社長に対して、どのような質問をしていき、強みや機会を深掘りし戦略構築を導いていくというロールプレイングなのですが、その中で実は社長役が一番学びが多いのです。
自分が過去に経験した実際の社長の立場で聞くことが、相手の立ち位置になり、どう質問されることが問題解決になるかを知れるからです。
このように、視座を変えると、違う視野が見えるようになるので、自分の偏見に気づくきっかけが生まれます。
視座は座ってみないとわからないので、ひたすら実体験が大事です。

視点が固定した状態から抜け出すこと

同じ環境や立場が長く続くと、視座が固定した状態が長く続くことになるので、価値の感覚がマヒします。

他人から見ると価値があるモノが、自分にとって「当たり前すぎるモノ」になっており見えなくなってしまうからです。

私は長崎県出身なのですが、東京に出てきた当時気づいたのが、魚の新鮮さからくる美味しさの差でした。
長崎にいるときは、地元で釣れた魚が生きている状態で料理されたり、さばかれてもあまり時間がかからない状態だったこともあり、新鮮で美味しかったのですが、東京に出てきた食べた魚が新鮮さが無く美味しいと思えなかったのです。
東京から長崎に帰省するようになると、今まで気づかなかった良いところがたくさん見つかるようになりました。
長崎に住んでいた当時は、「ただの日常でつまらない景色」だったのが、東京に出て、視座が変わったことで今まで見えていなかった価値に気づくようになったのです。

視座を固定させないために、「今いる視座から離れてみる」、「他人の視座になってみる」ことは有効な対処法です。

・偏見から解放されること
・視点が固定した状態から抜け出すこと
で、情報の吸収率が高まります。

そうなることで、自分の中に溜まるインプット情報が増えます。
そのため、「インプット情報に接する」だけでなく「受け取る(吸収する)ことが重要です。

視点と視座をコントロールする

まとめ

・視座は高ければよいわけではなく、上げ下げできることが大事。
・アクセスするインプット情報の吸収率をあげる方法は3つ。
1.視点を増やすこと
2.偏見から解放されること
3.視点が固定した状態から抜け出すこと
・視点を増やすことは、視座のコントロールと視野を広げるのが大切。
・偏見をもっていると思考がコリ固まってしまう。
・「偏見を無くすことはできない」ということを自覚する。
・「自分はいま偏見にとらわれていないか?」と常に問う姿勢をもつことで、偏見から解放されやすくなる。
・視点が一緒でも、視座が違えば価値や意味の解釈が変わってくる。
・視座は座ってみないとわからないので、ひたすら実体験が大事。
・視座を固定させないために、「今いる視座から離れてみる」、「他人の視座になってみる」ことは有効な対処法


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