以下は、実在の特定の企業ではなく、業種の一般的な状況から組み立てた想定を入力した、実際の出力です。 AIの出力は、誤字や改行の整形、列の省略や単位の付記といった体裁の調整をのぞき、中身を書き換えずに掲載しています(長い箇所は「抜粋」「中略」と断って削っています)。
全部そろえてから動くと間に合わず、今ある指示で動くと作り直しになる
店舗やオフィスの内装工事は工期が短く、着工してから変更が出ます。発注者の要望、設備の納期、現場で測った寸法。どれも避けられません。
変更をすべて施工図に反映し、全員に行き渡ってから動けば、1つ前の版で仕上げる心配はありません。ただし工期に間に合いません。手元の指示のまま進めれば工期は守れますが、1つ前の版で仕上げてしまい、作り直しになります。正確さを取ると遅れ、速さを取ると作り直しになる。
この「あちらを立てればこちらが立たず」を、TRIZ(発明の考え方を型に整理した問題解決の手法)では「矛盾」と呼びます。TRIZには矛盾を解くための早見表があります。「よくしたいこと」と「代わりに悪くなること」を、速度・信頼性・測定精度といった39の項目(39のパラメータ)から1つずつ選ぶと、表の交わるマスに解き方の型(発明原理)の番号が並びます。この表が「矛盾マトリックス」、型の一覧が「40の発明原理」です。
その場面を想定して、AIツール「矛盾を解決する原理を探す(矛盾マトリックス)」に相談してみました。
確かめたかったのは2つです。①現場の言葉の「正確さ」と「速さ」を、AIが39の項目のどれに置き換えるか。②表から引いた発明原理が、内装工事の現場で使える案になるか。この記事は、その3分・3往復をそのまま載せた記録です。AIが返してきたものと、人間が確かめないと危ない場所の両方を、出力を引きながら見ていきます。
設定はこうです。
- 店舗とオフィスの内装・設備工事をする会社の常務で、工事部を見ている。社員35名、年商9億8000万円
- 工期は2週間から2か月。着工後の変更が必ず出る
- 1つ前の版で仕上げる手戻りが月に4〜6件、1件あたり10万円から40万円
- 変更のたびに現場のLINEグループへ写真と文章を流し、事務所からもFAXで施工図を送っている
- 職人の平均は52歳。スマートフォンでの細かい操作を嫌がる人もいる
この会社は、業種の一般的な状況から組み立てた想定であり、実在しません。
AIに入れたもの
最初に貼ったのは、上の設定を常務の言葉で書いた文章です。板挟みと手戻りの件数・金額に続けて、いまの手当てと、常務自身の見立てをこう書きました。
今は変更が出るたびに現場のLINEグループへ写真と文章を流して、事務所からもFAXで施工図を送っています。それでも行き渡りません。指示の出し方が悪いのだと思って、写真の撮り方や宛先の分け方を工夫しているところです。
「正確さ」と「速さ」を39の項目のどれに当てるかは、こちらからは書いていません。解き方の答えになる案も書いていません。対話モードを選び、AIの最初の整理に対しては、こう返しただけです。
この方向で進めてください。
AIが返してきたもの(抜粋)
「速さ」を良くすると「正確さ」が悪くなる、と置いた
AIはまず、現場の言葉を39の項目に置き換えました。
改善するパラメータ: 9. 速度
悪化するパラメータ: 28. 測定精度
ほかの当て方も、AIは自分から示しています。
改善: 25. 時間の損失 も関連しますが、「速さ」を直接的に指す 9. 速度がより適切と判断しました。
悪化: 27. 信頼性(手戻りによる顧客信頼低下)、24. 情報の損失(情報が行き渡らない問題)も関連が深いですが、「1つ前の版で仕上げてしまう」という具体例から、指示内容が現場で正確に把握されていない状態を指す 28. 測定精度が核心的な矛盾を表現していると判断しました。
候補を並べ、選んだ理由まで書いています。ここは、こちらから頼んでいません。
表のマスから、4つの原理を引いた
「この方向で進めてください」と返すと、AIは表のマスに並ぶ原理を出しました。
矛盾マトリクスの「改善 9. 速度 × 悪化 28. 測定精度」のマスに並ぶ原理は以下の通りです(並びは表の順):
第1候補: 28. メカニズム代替原理
第2候補: 32. 製造の容易さ(作りやすさ)
第3候補: 1. 分割(セグメンテーション・細分化)原理
第4候補: 24. 仲介原理
案は4つとも、紙と人が主役だった
原理ごとに案が1つずつ出ました。1つ目は、変更箇所に印を貼る案です。
変更箇所を色分けしたシールやマーカー、またはマグネットシートで物理的に特定し、現場の施工図や対象部位に直接貼り付ける運用を導入します。
2つ目は、変更した部分だけを配る案です。
例えば、変更点だけをハイライトしたA4用紙の「変更通知書」を、現場の目立つ掲示板に必ず貼り出し、関係者に配布します。
緊急度に応じて、すぐ口頭で伝える簡易な指示と、後日送る詳細な図面とを使い分ける話も添えられています。
3つ目は、確認の動作を決める案です。
職人が変更内容を確認したことを、指差し呼称と「〇〇変更、確認ヨシ!」の声出しで徹底し、現場リーダーや管理者が必要に応じてチェックシートに記入する運用を導入します。
4つ目は、伝える役の人を置く案です。
現場と事務所、そして職人の間に、変更指示の伝達と現場での確認、調整を専門に行う役割(現場変更調整員)を置きます。
デジタルも、1つ目の案のQRコード、3つ目の案の簡素なフォームとして出てはいます。ただ、どちらも脇の選択肢です。
ここまでで3分、3往復です。答える内容はあらかじめ決めていたので、考えながら答えればもっとかかります。
読み解き ── 人間が確かめるべき場所は、4つ
①:原理の番号と名前は、一覧と合っているか
筆者が矛盾マトリックスの表(アルトシュラーの39×39の表)で確かめると、「改善9 速度」と「悪化28 測定精度」のマスには、28・32・1・24がこの順で並んでいます。番号も並びも、AIの出力と合っていました。
合っていなかったのは名前です。AIは2番目を「32. 製造の容易さ(作りやすさ)」と書きました。40の発明原理の一覧では、原理32は「変色原理」です。「製造の容易さ(作りやすさ)」は、39の項目のほうの32番の名前です。同じ32番の、別の一覧の名前を書いています。
取り違えた名前は、3つ目の案の見出しにも出ています。
アイデア3(製造の容易さ原理の適用):
指差しと声出しで確認を簡単にする案は、「作りやすさ」の言葉に沿って組まれていると読めます。本来の変色原理は、物やその周りの色を変えて見分けやすくする型で、使い方のヒントにはマーキングも挙がっています。筆者が並べてみると、変色原理に近いのは、むしろ1つ目の「色分けしたシール」です。
番号が合っているので、名前の違いは読み飛ばしやすくなります。原理の番号を見たら、名前も一覧で引き直す。
②:「改善」と「悪化」の当て方と、向き
貼った文章は「正確さを取ると遅くなり、速さを取ると作り直しになる」でした。どちらを「よくしたいこと」に置くかは、文章からは決まりません。AIは速さを改善、正確さを悪化に置きました。
矛盾マトリックスは、向きや項目を変えると別のマスを読みます。AIが挙げた候補も含めて、筆者が表で引くとこうなります。
| 改善(よくしたいこと) | 悪化(悪くなること) | マスに並ぶ原理 |
|---|---|---|
| 9 速度 | 28 測定精度 | 28・32・1・24(AIが選んだマス) |
| 28 測定精度 | 9 速度 | 28・13・32・24(向きを逆にしたマス) |
| 9 速度 | 27 信頼性 | 11・35・27・28 |
| 9 速度 | 24 情報の損失 | 13・26 |
| 25 時間の損失 | 28 測定精度 | 24・34・28・32 |
向きを逆にするだけで、原理1(分割)が抜け、原理13(逆発想原理)が入ります。原理13の使い方のヒントには「前提を反転する」とあります。改善を「時間の損失」に置いたマスには、役目を終えたものを捨てる型の原理34(排除再生原理)が出てきます。
AIは候補を示しましたが、候補のマスを見比べる作業は返事に入っていませんでした。当て方を変えると、手に入る型が変わります。選ぶ前に、候補のマスを自分で並べる必要があります。
③:入れていない制約と、入れた数字
4つの案には、費用も手間の見積りもありません。4つ目の案は、こう締めています。
これにより、情報の抜け漏れや誤解を防ぎ、変更対応の正確性とスピードを両立させます。
調整員の給料はどこから出すのか。シールを作って届けるのは誰で、変更1件あたり何分増えるのか。どれも書かれていません。
予算と人の数はこちらから伝えていません。伝えていない制約は、案に入りようがありません。手戻りの件数と金額は伝えています。筆者が貼った数字で掛けると、手戻りは月に40万円(4件×10万円)から240万円(6件×40万円)です。AIの返事に、この幅への言及はありませんでした。
案の値打ちは、かかる費用をこの幅と並べて初めて決まります。並べる作業も、予算を足す作業も、人の側に残っています。
④:「伝え方の工夫」の土俵から出たか
AIは最初に、狙いをこう置いていました。
狙い: 工事における着工後の変更指示を迅速かつ正確に現場に伝え、手戻りをなくすこと
「伝える」が、狙いに最初から入っています。4つの案も、どれも伝え方を良くする案です。
常務が書いた「指示の出し方が悪いのだと思って」と同じ土俵です。案が間違っているわけではなく、伝え方が良くなれば見落としは減るはずです。ただ、どれだけ磨いても、変更のたびに新しい版を作って現場へ届ける形そのものは変わりません。
TRIZには「理想の仕組みは、それ自体が無いのに働きだけが果たされる」という考え方があります。そこから立つ問いは「何をなくせば矛盾そのものが消えるか」です。この問いは今回の3往復に出てこず、こちらからも聞いていません。今回、自分が最初に書いた見立ては、AIの狙いにそのまま写りました。土俵を変える問いは、人が立てる必要があります。
整理すると、解いた問題はこうなる
問題は、原因・作用・対象・結果の4つをつなぐと形が見えます。上から下へ読むと因果の流れ、左右で見比べると変わった場所が分かります。
| 現状 | AIが組み直したあと | |
|---|---|---|
| 原因 | 変更のたびに版を作り、紙・LINE・FAXで別々に届ける | 同じ(変えていない) |
| ↓ | ↓ | |
| 作用 | 写真の撮り方や宛先を工夫して伝える | シール・差分の掲示・指差しと声出し・調整員で伝える(ここだけ変えた) |
| ↓ | ↓ | |
| 対象 | 職人が手元に持つ指示 | 同じ |
| ↓ | ↓ | |
| 結果 | 1つ前の版で仕上げる手戻りが月に4〜6件 | 見落としは減る見込み。版を作って届ける形は残る(ここから先はまだ試していない) |
動かしたのは作用の1つだけです。原因には手を付けていません。
では、AIに任せてよかったのはどこか
現場の言葉を39の項目に置き換えて候補と理由を添え、表から原理を正しい番号と順で引き、職人の年齢に合わせた案を4つ出す。ここまでを3分で並べるのは、人間より速いはずです。
引く仕事と並べる仕事は速い。番号と名前を一覧で照らす仕事、当て方を選ぶ仕事、費用を手戻りの幅と比べる仕事、自分の見立てを疑う仕事は、まだこちらの仕事です。
実在の前例 ── 同じ仕組みで成功している会社
上の整理でAIが手を付けなかった原因のうち「紙・LINE・FAXで別々に届ける」を1か所にまとめ、全員が同じものを見る形に変えた会社が実在します。
店舗の内装・原状回復工事をする株式会社キャンディルテクト(東証スタンダード上場の株式会社キャンディルのグループ会社・従業員309名〈2022年10月現在〉)です。導入事例として公開された情報によれば、内装工事の後のメンテナンスを担う部署では、進捗、案件、報告書や図面を別々の道具で扱い、協力会社との連絡手段も相手ごとに違いました。それを1つにまとめ、案件ごとのチャットで元請けも協力会社も同じ情報を見て、誰が読んだかも分かる形にしました。担当者は「伝達ミスや齟齬も減っています」と話しています。
ただし施工図の変更指示の話ではなく、数値もありません(導入3か月ほどの時点)。示せるのは、同じ仕組みを動かす会社がある、というところまでです。
出典:業務アプリ「KANNA」の提供元が公式サイトに載せた導入事例「株式会社キャンディルテクト」 https://lp.kanna4u.com/casestudy/candeal-tect/ (2024年4月4日掲載・2026年10月19日確認)
今日から試すには
いちばん確かめる価値があるのは、この記事の板挟みではなく、あなたの会社の板挟みです。5〜15分ほどで、よくしたいことと悪くなることの組み合わせ、表のマスに並ぶ発明原理、それを自社に当てはめた案まで一度並べられます。並んだものが正しいかどうかは、そこから人間が決める話です。原理の番号と名前、改善と悪化の当て方だけは、必ずご自身で表と照らしてください。
使ったのは、AI壁打ちツール Idea Realize AI(https://idea-realize-ai.com/)の「矛盾を解決する原理を探す」です。ご利用には会員登録が必要です。無料でお試しいただける期間があり、期間終了後は自動で有料に切り替わります。最新の条件はサイトでご確認ください。
本記事について
本記事に掲載したAIの出力は、業種の一般的な状況から組み立てた想定を入力して得られた実際の応答です。実在の企業・団体・人物とは関係ありません。
生成AIの性質上、同じ内容を入力しても同じ出力が得られるとは限りません。掲載したのは記事作成時点の一例です。
出力に含まれる数値・予測・評価はAIによる推計であり、事実の裏付けや将来の成果を保証するものではありません。記事中でも触れたとおり、原理の番号と名前、改善と悪化の当て方はご自身で表と照らしてください。
記事内で言及した各社のサービスは、各社の公表情報にもとづく紹介であり、優劣の評価や推奨ではありません。詳細は各社の公式情報をご確認ください。
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