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買うと受け取るは、同じ出来事ではない ── 作業服の事例を釣具の店へ移した手順

買うと受け取るは、同じ出来事ではない ── 作業服の事例を釣具の店へ移した手順

本記事に出てくる釣具とアウトドア用品の会社は、業種の一般的な状況から組み立てた想定です。実在の企業・団体とは関係ありません。ワークマンのみ、公開情報にもとづく実名です。

買うと受け取るを、1つの出来事と見ていた会社

買うことと受け取ることは、ふだんは1つの出来事に見えます。けれど時間で切ってみると、2つは別々のことを求めてきます。この切り分けを、作業服の事例から釣具の店へ移した手順を書いておきます。

借り元は、ワークマンです。大手のネット通販モールから撤退し、買い物を「購入」と「受け取り」に分けた会社です。注文はネットで受け、受け取りは店で済ませてもらう形にしました。

作業服の会社の工夫として読んでいるうちは、釣具の店には何も写りません。写るのは、売っている物とは関係のない部分です。買い物を2つに分けた、その分け方です。

置き先は、釣具とアウトドア用品の専門店を3つ持つ会社にしました。本部の小さな倉庫に、ネット専用の在庫を分けて置いています。店には在庫があるのにネットは欠品し、ネットに寄せると今度は店が品切れする。送料は自社で負担していて、ネットは売れても利益が残りません。

作業服とモールの言葉を、3段で外す

借り元の記事が描いた板挟みは、ネット通販を店とは別物として持つほど、在庫は枯れ、コストは増える、というものです。この一文から、業種の言葉を順に外していきます。

一段目では、ネット通販という言葉を外します。ネット専用の在庫は、「店とは別の場所に置いた在庫」と言い直せます。売り場が画面の中かどうかは、もう関係がありません。

二段目では、置き場所の話を数の話に直します。店と別に置くとは、同じ品物を2か所に分けて持つことです。片方にあって片方に無い、という欠け方は、ここから生まれます。品物を動かすたびに、送料もかかります。

三段目で、解き方の側を言い直します。借り元は、注文はネット、受け取りは店、と分けました。これは「お金を払う時」と「品物を手にする時」を、別々の時として扱ったと読めます。

残ったものから先に言います。分けて持つほど欠け、動かすたびに利益が減る、という形です。作業服もモールも、この形には出てきません。解いた手つきも残ります。借り元は専用の倉庫を新しく持たず、すでにある店の在庫を母体にしました。買い足すのではなく、手元の店を、在庫の置き場と受け取りの場に使い直したのです。

時間で切る話なので、置き先の会社の相談には、お客の体験を時間の順に並べるAIツールを使いました。Idea Realize AI の「お客様の体験を時系列で設計する」です。認知から購入、利用、ファン化までの段階ごとに、打ち手を表に置いていきます。購入と受け取りが別の段に並ぶかどうかを、ここで見ることにしました。

品揃えの狭い専門店には載り、広い店には載らない

置き先には、釣具とアウトドア用品の専門店を選びました。釣具もアウトドア用品も、季節と天候で売れる量が動きます。在庫の話が、無理をせずに出てくる業種です。もう一つ、接客の比重が高く、店で買う理由が残っています。手元の店を使い直す答えを借りるなら、店にまだ役目がある業態のほうが合います。

設定は、借り元の形を釣具の言葉に写して作りました。ネットの売り場は、自社のサイトとモール1つ。ネット専用の在庫は本部の倉庫に分けて持ち、店とネットの両方で欠品が起きる。送料は自社持ちで、1件ごとの利益が消えていく。借り元の記事にあった、別物として持つほど在庫が枯れる形を、そのまま置いています。

店の数は3つです。10店舗にする案もありましたが、大きすぎると、中小の会社を営む読み手が自社を重ねにくくなります。

ホームセンターも、置き先の候補に挙げていました。釣具の専門店なら、その1本が無いと売れない、という場面がすぐに浮かびます。ホームセンターは、品揃えが広すぎます。店とネットで在庫を分ければ欠品は同じように起きますが、1品が欠けたときの痛みが、読む人に伝わりにくくなります。痛みが軽く見えると、分けて持つほど欠けるという形も、読む人には重く響きません。そこで置き先から外しました。

借り元と同じ作業服の店にする案は、最初から外しています。業種まで同じにすると借り元の会社が特定でき、実在の会社の話として読まれてしまうからです。

答えを書かずに渡し、届かなかったところ

迷った箇所の1つ目は、答えの置き場所です。設定に書いたのは、店とネットの欠品と、送料で利益が残らないという困りごとまでです。3店舗を1つの倉庫として扱う、という答えは書いていません。書けば、ツールが引き出す前に答えが出てしまいます。結果として、ツールはその答えまで届かず、購入の次に受け取りの段が立つことも、在庫を分けて持つ前提が問われることもありませんでした。

2つ目は送料です。自社で負担させるか、させないか。負担しなければ利益は残ります。けれど、送料が重りになるという、借り元の板挟みが消えます。自社負担のまま、送料無料は5,000円以上という現実にありそうな線を引きました。

体験の話に絞るため、数字は店ごとの売上、ネットの比率、欠品の件数の3つにとどめました。在庫の回転や欠品の率まで持たせると、ツールが数字の分析に流れてしまうからです。どこまで持たせるかが、3つ目の迷いでした。

捨てた案は、どれも迷わずに決めました。誰に売るかを絞る道具は、在庫を二重に持つ板挟みと噛み合いません。強みと資源を棚卸しする道具は、店を資産と見る筋には合いますが、別の記事で使ったので中身が重なります。百貨店の在庫をまとめた事例は、構造が近すぎて、どちらを借りても同じ記事になります。土俵の組み替えがはっきりした側を採りました。ホームセンター、10店舗、作業服の3案も同じです。

払う時と手にする時を、自社の流れで切り分ける

あなたの会社にも、買うと受け取るが1つに見えている場面がないでしょうか。

ステップ1。お客がお金を払う時と、品物やサービスを手にする時を、それぞれ書きます。2つが同じ時に済むなら、その場面は外して構いません。

ステップ2。2つの時の間に起きている困りごとを並べます。欠品、送料、届くまでの待ち、受け渡しの行き違いのようなものです。それぞれが払う時の要求か、手にする時の要求かで、印を分けておきます。

ステップ3。困りごとの横に、すでに持っているもので、その役を担えそうなものを書きます。店、倉庫、人、配送の手段。新しく買う物は、この欄に書きません。

ステップ3の欄が1つでも埋まれば、それが使い直しの候補です。

お客の流れを段階ごとに一度並べてみたいときは、AI壁打ちツール Idea Realize AI(https://idea-realize-ai.com/ )の「お客様の体験を時系列で設計する」が使えます。あなたの会社の流れなら、15〜30分ほどが目安です。ただ、段階の名前に払う時と手にする時の間が入っているかと、最初に書いた前提が問い直されたかは、表が出たあとにあなたが確かめる場所です。ご利用には会員登録が必要です。無料でお試しいただける期間があり、期間終了後は自動で有料に切り替わります。最新の条件はサイトでご確認ください。

本記事について

この記事は、bp-d.com の「なぜ撤退が強みになったのか──ワークマンに学ぶ「すでに持つ資産を上位の仕組みに束ねる」法則」(https://bp-d.com/?p=3854 )と「店とネットで在庫を取り合っていませんか ── AIが見落とした「買う」と「受け取る」の間」(https://bp-d.com/?p=4369 )の2本を下敷きにしています。本文でふれた分析と相談の中身は、それぞれの記事にあります。

本記事で取り上げた事例は、『DX経営図鑑』(金澤一央/DX Navigator編集部 著、アルク、2021年)を着想元に、公開情報をもとに独自に再構成したものです。書籍本文・図版の転載は行っていません。

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